神戸新聞に掲載されました![2011年5月15日(日)]
2011年5月15日(日)、神戸新聞の阪神面(23面)に、土田善太郎のインタビュー記事が掲載されました!
(転載します)
木製の机上に、力ラフルな上薬やビーズを入れた容器がずらりと並ぶ。この工房で、朝9時から気の済むまで制作に打ち込む。
銅板を切って型押しし、カラフルなガラスの粉を乗せて焼き上げる七宝。金属とガラスを融合させた技術は、古代から世界中で脈々と受け継がれてきた。携わって45年になる。こだわりは、細い銀線を表面に入れない「無線七宝」だ。
約800度の窯には、1、2分しか入れない。素材の溶けすぎを避けるためだ。色を足すたびに4、5回繰り返す。すると、着物の文様を思わせる柔らかなグラデーションが刻み込まれる。
福井県で生まれ育った。大阪の貿易商社に勤務していたとき、路上で偶然、七宝教室の看板が目に留まった。「手軽なホビー(趣味)だなと思った」。迷わず参加し、独立開業するまでは1年半もかからなかった。間もなく西宮で工房を持った。
「焼き時聞が短いから陶芸より結果が早い。作業にスペースを取らないのも魅力」という。モチーフは得意のフクロウから、えとや節句ものまでさまざま。ブローチやイヤリング、ペンダントといったアクセサリーは、40〜50代の女性に人気だ。縦5m、横20mの壁画をカーフェリー内に製作したとともある。
取引先は東京や京都に多い。「ネット販売にも力を入れたいね」と商売人の顔ものぞかせる。阪神間での販路拡大も狙っている。
昨年末、心筋梗塞で入院した。体力に不安を覚え「辞めようと思った付ど、注文が入るからね」。一人一人の客の笑顔が頭に浮かび、わずかひと月で戻った。
「自分の能力を出し切って死にたい」。鍛密な作品を手に、丁寧にピンセットを動かす真剣なまなざしから、ものづくりへの揺るぎない自信が見えた。
71歳。西宮市在住。
[横顔]
名前の頭文字「Z」をとった工房「アンクル・ゼット」(善太郎おじさん)は月3回ほど、七宝教室となる。「巨匠」と慕われ、15年以上スタッフの女性が3人、生徒も顧客も大半は女性。「女性に食べさせてもらってるんだから、女性は大切にしないと」と、おどけた。
(記事:竹本拓也, 写真:立川洋一郎)